土地、設備、資金の確保
(1)就農地域の選定をしましょう
就農するにあたり、農地があるか否かは別にして、県内や出身地域あるいはその近隣において、ある程度は希望する地域を決める必要があります。
その際、「一定の候補地域」と「どういう農業をやりたいか」というイメージがあれば、候補地域に対して、イメージに合う農地があるかどうかを問い合わせることもできます。
作物にはその作物に適した気象条件や土壌条件があり、「どんな作物を作りたいか」も候補地域を選ぶための重要な要因になります。
また、家族の同意を得るためにも生活条件も考慮する必要があります。
就農するに当たって現在の地域を選んだ理由としては、「取得できる農地があった」が最も多く、次いで「自然環境がよい」、「行政や農協の受入れ支援体制が整っていた」、
「相談窓口の斡旋による」、「希望作目の適地である」、「その地域をよく知っていた」、「家族の実家に近い」などがあります。
農業はその土地に根をおろした仕事といえます。農業生産の環境や土地柄を考えて、自分たちの一生を託するにふさわしいところを選定することが大切です。
(2)農地を取得しましょう
新しく農業を始めるにあたり、農地の取得は基本であり大切なことです。
就農を望む地域で農地を取得するには本来、自分の目指す経営作目や家族の納得する生活条件などを考慮して就農候補地をいくつか設定し、 その中で必要な農地面積、日照条件、土壌条件、水利権など、更に購入する場合は農地価格を十分検討して選定することが望ましいのですが、 農地は先祖から受け継いだ農家の貴重な財産であるため、農地の売買は必ずしもスムーズに進むとは限りません。
農地情報に詳しい市町村農業委員会によく相談し、情報を収集するとともに、就農先として狙った地域において信頼関係をつくることが、
希望条件に近い農地を取得する方法といえます。
農地取得の方法としては、農地の所有者から買い取ることと、借り入れることが考えられますが、新規就農者の場合、借り入れるケースが多いようです。
農地等(農地または採草放牧地)を買ったり借りたりする場合は、農地法などの許可が必要になります。その窓口は各市町村にある農業委員会です。
この農業委員会の許可を受けないと、当事者間で契約を結び金銭を支払って農地を取得しても、登記ができません(自分名義になりません)。
具体的な手続きは、取得する農地のある市町村の農業委員会へ、農地の所有者と連署で売買または賃貸の申請書を提出する必要があります。
一般的に、農地を取得(賃貸含む)して耕作するには、農地法第3条許可申請を、農地取得後に住宅や畜舎などを建てる場合には、農地法第4条許可申請を、
更に住宅や畜舎などを建築するために農地を取得する場合には、農地法第5条許可申請の手続きを行うことになります。
(3)資金を確保しましょう
新しく農業を始めるには、初期投資として農地の購入、畜舎等施設の建設、トラクター等農機具の購入等の設備投資資金が必要なほか、 種苗や肥料・農薬の代金など1年間営農するのに必要な資金や、現金収入が入るようになるまでの生活資金も必要です。 要な営農資金額は、経営作目によって異なりますので、まず、「どの地域で就農し、どんな農業をどんな規模で行うか」を明確にして、 営農計画と生活設計を綿密に立てることが特に大切です。
できる限り自己資金を活用することが望ましいのですが、公的な融資制度を有効に活用するのも一つの方法ですが、借りるには一定の要件が必要です。 また、融資額や信用状況に応じ、担保や保証人を必要とします。
(4)農業機械等の設備と施設を取得しましょう
現代の農業は、一般的にはかなり施設化、機械化しており、新規に農業を始める場合、すべてを一度に揃えようとすれば、多額の資金を必要とします。
しかし、新規就農の場合、まず農地購入の資金や、2~3年は無収入と想定した場合の生活資金の準備などに多くの資金を必要とし、 施設や機械の購入まで資金的に余裕がないのが一般的です。
そこで、新規就農の場合は、当初は必要最低限の農機具や施設を手当てし、経営が軌道に乗り始めてから徐々に装備を充実していくのが賢明です。
中古品やリース、借り受けなどで対応するのも負担を軽減する方法のひとつです。
(5)住宅を確保しましょう
農村に移り住んで農業を始める場合、当然そこに家が必要になります。
農作物の栽培は、常に、自然現象に大きく左右されます。適時、適切な栽培管理をしていくためには、できるだけ住居と農地を合わせて用意することが望まれます。 新規就農者の就農実態調査では、農家の空き家を利用している方が50%、民間住宅への入居が25%、公営住宅への入居が15%、新築する方が10%となっています。
(6)就農支援措置の活用
行政やJAを主体とした新規就農者を支援するための措置が充実しつつあり、うまく活用するのもひとつの手段です。
支援措置の主な内容は、実際に就農するまでの研修の支援・助成、機械・施設導入に係る低利融資制度など内容が充実してきています。
しかし、自分の「目指す農業のイメージ」を基本としながら支援措置の趣旨および内容を吟味して、自分の就農の具体化に向けて主体的に有効に活用することが大切です。 まずは、該当する機関へ相談することから始めましょう。
(7)家族の同意
新しく農業を始める場合、意外と見落としがちで重要なのが家族の同意と理解を得ることです。家族の協力がなければ新規就農がうまくいかないといっても過言ではありません。
特に結婚している方にとって配偶者の理解はとても大切で、農作業および農業経営のパートナーとして、また農村生活者のサポーターとして、
強くバックアップしてもらわなくてはなりません。
子供にとっては、豊かな自然にふれられる反面、学校や友人関係および生活環境が大きく変化するなど大きな不安を抱くこともあり、現地に同行してお互いによく理解することが大切です。
更に、独身者にとっても親などの理解を得ることが大切です。精神的な支えや資金的な援助を受けたり、融資を受ける際の保証人をお願いすることも考えなくてはなりません。
なお、「農業は一人ではできないため一生の伴侶を見つけてから就農することが望ましい」と助言する新規就農者もいます。
従って、就農相談の過程で相談窓口や就農候補地の下見等には、なるべく家族の方を同行するなど、就農について家族全員で取り組む姿勢が大切です。
そのことが家族の理解を深め、就農後の展開をしっかりした方向に導くことになるでしょう。
(8)地域社会とのコミュニケーション
農村に住んで農業を始めるということは農村社会の一員ともなるわけで、地域住民とのコミュニケーション(いわゆる“ムラづきあい")が大事です。
農業で成功するかどうかは、地域社会にどれだけ溶け込めるか、地域の人とうまくお付き合いできるかにかかっているといっても良いでしょう。
そのためには、集落の会合や行事、共同作業などに積極的に参加し、場合によっては一定の役割も担うなどの努力が必要です。
また、集落には、水路掃除は□月□日、神社の掃除は□月□日、参加出来なければ□□□円の罰金 ― というような一定のルール(約束事)を設けているところもあります。 このことは、書面によって周知されているとは限らず、口約束の場合も多いので、集落に入ったら、どういうルールがあるかを確認することが大切です。
更に、その地域内の農業に限らず、腹を割って何でも相談できる人や農業を営む先輩を見つけることも重要です。
そのほか、就農前の研修期間中から、地元の農家と積極的につきあうことも重要で、そのことにより実際の就農をスムーズに運ぶことができるでしょう。
できるだけ多くの知り合いをつくっていくことが大切です。
(9)就農後の留意事項
サラリーマンなど農業を未経験の状況から新しく農業を始められる方は、つぎの点に留意してください。
- サラリーマンのときには、給与から一括差し引かれていた税金、福利厚生費のうち、市町村民税、国民健康保険料は前年度の所得額に対し、課税されます。
- これまでの厚生年金に代わって、農業経営者など自営業者の加入する「国民年金」は満20歳以上の者すべてが対象になります。さらに、農業経営主には「農業者年金」への加入が義務づけられています。
- 就農と同時に始まる農業資材や生産物の取引等の経済活動は、地域のJAを通じて行うことが多いため、JAの組合員となるための手続きも必要です。
(10)家族経営協定の勧め
わが国農業の経営形態は、家族を中心とした農業の営み(いわゆる、家族農業経営)が一般的ですが、
経営内における個人の地位及び役割が明らかになっていないことが若者達の就農意欲の低下の一因ともなっております。
農業を職業として選択した者が、経営内における個人の地位や家族の役割分担・休日・休暇、就業条件、収益の分配などに関するルールが明確化され、
意欲をもって農業に取り組むことができるよう就農条件を整えることが必要です。
その手段として、「家族経営協定」を結ぶことが家族の意欲の増進と能力の向上、さらには、生活運営の近代化として期待され導入されています。
